〜 パソコンが我が家にやってきた 〜
娘が、就職と同時に、仕事に使うからといってパソコンを買ってきた。
自分の給料を注ぎ込んで、仕事の為パソコンを買うなんて
「なんて殊勝な娘だろう」
愚かな母は娘を自慢に思うのであった。
「だれも絶対触るんじゃないよ!」
そうヒステリックに叫んだ娘は
パソコンと共に部屋にこもって2、3日したある日、
10メートルもあるモジュラーケーブルを買ってきた。
そして、次の日から仕事から帰ると夕食もそこそこに
そのケーブルをズルズル引きずって2階の自分の部屋にこもる毎日が続いた。
|
〜 仕事にインターネットは必要か 〜
何日かしたある日、娘を捕まえて聞いてみた。
「どんな仕事に使っているの?計算とか?」
「う・う・ん・」 歯切れが悪い。
覗き込むと隠す。怪しい。
「ポーン」 突然パソコンから音がした。
同時に覗き込む。「こっ、これは!」
なんてことだ!これはチャットというヤツではないか!
「こんな事を毎晩毎晩やっていたの?!」
「電話がかかってきたらどうするのよ?!」
「いったい仕事はどうなったの?仕事は!!!」
わめきちらす母に向かって、娘はやけに冷めた口調でこう言った。
「私だってせっかく買ったんだもの、仕事に使いたいわよ。
ただパソコンが必要になるような仕事をさせてくれないのよ。」
・・・・・・・・・
まぁ〜〜〜 それはそれは、ご愁傷さま。
|
〜 そして、パソコンは1階に降りてきた 〜
ネットやチャットやメールにハマっている娘を白い眼で見ながら、
取説を手に取ってみる。
「ふ〜ん、おもしろそう」
ワードはともかくエクセルは使えるかも。
家計簿が作れるかもしれない。
「プリンター、買ってあげるし、電話代こっち持ちで良いから、パソコン貸して」
相手にとっては好条件のつもりで交渉すると、
アッサリOKした娘はエラそうにこう言った。
「いいけど。テレホーダイにしたから電話代はたいしたことないはずだよ」
しかし、次の月から電話代は3倍になった。犯人は娘しかいない。
私はまだ、ネットができない・・・
しかし、それからのパソコンは、1階のダイニングテーブルが定位置となり、
ノートパソコンの威力を思いっきり発揮してくれた。
|
〜 おっかなびっくり、掲示板に書きこむ 〜
エクセルで今までの家計簿の統計を出したり、
ワードでキーボードの練習をして遊んでいたが、
ある日、店のパソコンコーナーでひとつのソフトを手に取った。
主婦としては、それは目が飛び出るくらいの値段だった。
迷う、まよう・・・そして迷う。
ついに好奇心に勝てず買ったのは、家計簿ソフトだった。
エクセルで家計簿を作っては見たものの
何度もコピーを繰り返さなくてはならず、
面倒くさくて根をあげていたのだ。
どんな精巧な機械でも、使いこなせなければただの箱、ってことだ。
そして、このソフトをいじる事、1年。
くやしいけれど、再度娘に頭を下げる。
「掲示板の書きこみ方を教えて」
そしてハマる。・・・・・・ドツボにハマる。
どうしてこんなに感動するのだろう。
誰かに手紙を書いて、返事が来たと同じなのに。
たぶんそれはパソコンという、
おばさんにはちょっと優越感を持たせてくれる物が媒体だからだろう・・・か
い〜や、若い娘だって夢中になっているではないか。
|
〜 ホームページをつくる〜
こうして振り返って見ると、
自分は気が長いのか飽きっぽいのか良く分からないが、
パソコンへのハマり方はしごくノーマルだと思う。
当然の成り行きとして、
次に行く先はホームページ作成しかないじゃあないか!
ある日、買い物帰りに
「週末に作るホームページ」という見出しのある雑誌を買ってきた。
3時間でできる、と書いてある。
(ほぉ〜〜ブラウスを作るより簡単か)
HTMLが分からなくても良い、らしい。
(??何の略だろう?)
コンテンツが大事、とも書いてある。
(まぁ〜コンテンツだって、ステキ♪)
とりあえず、いろいろなホームページに行ってみた。
その膨大な量に驚く。行きたいページになかなか行き当たらない。
検索は難しい。
ネットサーフィンをあきらめ、どういう仕組みになっているか
webページウィザードを使ってみる。
なんの設定も要らない。
文字だけ入力すれば勝手にジャンプして次のページに行く。
「すごい!」パソコンの前でひとり手を叩いて喜ぶ。
が、一晩寝て起きるとすっかり熱は冷めていた。
これは自分がすごい事をした訳ではなく、
パソコンがすごかっただけなのだ。
私は自分の作ったHPを誰かに見てもらいたかった訳でも、
伝えたい何かがあった訳でもなかったのだ。
ただ、HPを作りたかっただけなのだ。
そして誰かに「すごいじゃない」とか、
誉めてもらいたかっただけかもしれない。
これが「HPはコンセプトが大事」という意味か。
|
〜 ついにホームページ・デビュー、か? 〜
テーマを手作りとした以上、
HPも手作りしようというこだわりはサッサと捨て、ソフトを買ってきた。
HPには更新という作業があるではないか。
中身はおいおい充実させていけば良い。
さて公開にあたっては大きな問題がある。
何かあるたびに言う娘の脅し文句。
「このパソコンは私のだからね」
パソコンを持って出て行かれたらどうしよう。
まあ、根拠のない心配である。
さあ、いよいよデビュー・・・できるだろうか?
|
〜 それから1ヶ月 〜
「なんで自分のホームページを見てるのよ!」と言う娘の声でハッと我に返る。
どのくらいウットリと眺めていたのだろう。
あれから毎日、朝イチでチェックして、
夜寝る前に又見るという生活が続いている。
ホームページを立ち上げてみると、人のものも気になる。
今ごろになってネットサーフィンにハマる。
ちょっと前は電話代がどうたらこうたらと文句を言う立場だったのに。
「良いホームページがあったら、ソースを見てみよう」と本に書いてあった。
見てみる。
「・・・・・・・・・・?」
そんな事はどうでも良いのだ。
ホームページには「こう ・・ ねば」というものはない。
どこかの誰かが「はじめまして」と訪れてくれると、がぜんファイトが沸く。
が、手持ちが少ないので更新もままならない。
ホームページを開設する時に固く誓った事がある。
振りまわされるのはよそう。その為にはカウンターは付けない。
しかし、イザ公開してみると、反応が気になってしかたがない。
ネットの歌い文句に「世界と繋がる」というのがあるが、
自分の作った仮想空間と繋がっているだけではないか、という思いを拭い切れない。
相手の顔を見て、目を見て、態度を見て話をするような、
地に足のついたつき合いに戻ろう、と思いつつ、ネットの世界から足を洗えない・・・
|
〜 祝! 開設半年 〜
いやぁ〜〜 半年もったわ、めでたい、と浮かれていたらパソコンが壊れた。
修理に3週間かかり、その後なんだかんだで
約1ヶ月パソコンのない生活を送った。
この半年間に お気に入り もずいぶん増えた。
誘って頂いてチャットも体験した。
さあこれからだ、と思った矢先のアクシデントだった。
パソコンのない生活は多忙だ。
衣替えの季節だったし、花の植え替えもあった。
仕事に行く前には掃除も済ませたし、洗車もした。
もちろん趣味の籐も編んだし、もろもろのおつき合いもあった。
それでも秋の夜は長い。
なにより思うように身動きとれない主婦が、
時間を気にせず没頭できるものはネットしかないではないか。
顔もわからない相手と同じ思いや時間を共有できることは、
良い事なんだと思えるようになった。
いろいろな方のホームページを何度も訪問していると、
その人の性格や考え方が伝わってくる。
それはけっして、自分の作った仮想空間の仮想人間ではないという事に気がついた。
ホームページを作った時、
たぶん作りっぱなしの自己満足で終わるだろうと思っていたが、
今では訪問して下さった方々が一瞬でも、あら、いいわね、と思ってもらえるものを目指したいと思う。
祝!開設半年 !! 自分に乾杯 ・・・ なんちゃって。(^○^)
|